2026/08/21

初心にかえる場所

たすく

遊戯王OCG

Display Your Memories

カードゲームには、「逆転」という魔法がある。


追い詰められたライフポイント。残された手札はわずか。それでも、デッキの一番上の一枚が、すべてをひっくり返す。


そんな瞬間を経験したカードは、もう単なる紙ではない。持ち主だけの物語を宿した、一生ものの相棒になる。


本企画「Display Your Memories」は、様々なTCGのプレイヤーに思い出の5枚を選出してもらい、その一枚一枚に宿る物語を語ってもらう企画である。


■自己紹介

──本日はたすくさんにお越しいただきました。


「たすくです。遊戯王はOCGとマスターデュエル両方取り組んでいて、マスターデュエルの方は3年連続世界大会に出場しています。2026年も出場予定です。遊戯王OCGの方では昨年のYCSJで優勝しました。」


「遊戯王星人」の呼び声の高いたすく氏は、ランキング形式の世界規模の公式大会「デュエリストカップ」にて過去9回に渡って1位を獲得し、世界大会常連のプレイヤーとなっています。


■思い出との再会

──それでは、お預かりしたカードをお返しいたします。



グレーディングが完了した5枚のカードを受け取り、ショーケースに収めていく。


「真ん中はもう何にするか決まっています。」


迷うことなく、まず1枚のカードを手に取り、それから残りのカードも順にケースに収めていく。



「自分の思い出を振り返っている感じがして、良いですね。こういう頃もあったなって。」


当時の思い出が脳裏に浮かび上がっているような感慨深い表情と共に、1枚1枚のカードをケースに収めていく。


「これが自分の歴史を作り上げてきた5枚です。」



──今回の企画では、何らかのテーマに則って5枚のカードを選んでいただききました。こちらの5枚はどのようなテーマのカードなのでしょうか?


「こちらのカード、5枚中4枚は大会で活躍してくれたテーマなんですが、1枚だけ大会環境とは関係なく、単に『好きなカード』として選びました。これは、僕の遊戯王の『原点』ともいえるカードです。自分が遊戯王に対し、『好き』から始まって徐々に『勝ち』を目指すようになっていった、そんな歴史を表現した5枚となっています。」


■1枚目:《ブラック・マジシャン》


「この《ブラック・マジシャン》は、遊戯王の主人公『武藤遊戯』のエースなんですが、自分にとってはお兄ちゃんにもらったカードなんです。自分にとって初めての遊戯王体験は《ブラック・マジシャン》と共に始まったということで、思い入れの深いカードです。」


──たすくさんといえば、今では競技環境の最前線を走るプレイヤーというイメージですが、カジュアルに遊んでいた時代もあったのですね。


「遊戯王を始めてから10年近くはかなりカジュアルに遊んでいました。大会に出たりするようになったのは13年前ぐらいですね。当時はかなりシンプルな戦術を好んでいて、攻撃力の高いモンスターでただ殴っていくだけのデッキでした。」


──《ブラック・マジシャン》というと、最初期からあるカードなだけあって、イラストやレアリティも沢山存在していますが、特にこのバージョンを選んだ理由はありますか?


「今回選んだ《ブラック・マジシャン》は、25周年記念で販売されたパックに収録されていた物です。遊戯王は自分が生まれたのとほぼ同じ年に始まったので、遊戯王と共に歩んできた年月を感じる事のできる1枚として選びました。」


■2枚目:《No.39 希望皇ホープ》



──続いて、2枚目のカードについて質問していきます。


──ほかのカードに比べると、環境トップの面々が並ぶなかでこれは少し毛色が違うように感じますね。


「このカード《No.39 希望皇ホープ》は、僕が初めて大会で優勝した時に使ったカードです。当時は学生で、あまりカードのかけられるお金も無かったので、その中で何とか揃えられるデッキとして【BK】というデッキを使用していました。」


※【BK】…BKリリース当時は【魔導】と【征竜】がほぼ二強を占める、いわゆる「魔導征竜環境」だった。ただしどちらも主要カードのレアリティが高く、一式揃えるには相当の出費を要した。その点【BK】は低レアリティのカードだけで組めるため、学生プレイヤーの強い味方で、人気も高かった。


──懐かしいですね。僕も【BK】は使っていました。《No.39 希望皇ホープ》はどのように活躍したんですか?


「《No.39 希望皇ホープ》は防御寄りの効果を持ったカードなんですが、《CNo.39 希望皇ホープレイ》というモンスターに進化させる事ができて、こちらはライフポイントが少ない状態から逆転できる能力を持っています。このカードはアニメの主人公が使っていたカードで、実際にアニメ内でも逆境からの逆転に使われるアツいシーンが多く、強さというよりそのカッコよさに惹かれて採用していました。」


──アニメのような展開が現実でできるというのは、遊戯王の醍醐味の一つですね。


「勝ち負けだけでなく、カッコいいモンスターを使ってみたい、というような目的が当時は今よりも大きくて、《No.39 希望皇ホープ》を何とか活躍させたいと思ってデッキを組んでいました。そんな折、大会で《No.39 希望皇ホープ》を出せる機会が訪れたんです。が、肝心の《No.39 希望皇ホープ》はその試合ではすぐに破壊されてしまいました。そのまま攻められ、ライフポイントも1000以下まで追い詰められてしまいました。」


──おお、まさにアニメのような展開ですね。


「その後もまさにアニメのような展開で、ギリギリの逆境の中で、《死者蘇生》をトップから引き当てたんです。」


※《死者蘇生》…破壊されたモンスターを復活させることのできるカード。その強さから長らく制限カードとして指定されていて、1枚しか入れる事ができない。初代アニメでも最終決戦の命運を分けたカード。


「そして《No.39 希望皇ホープ》を進化させて、一気に相手のライフを削り切って逆転しました。あの瞬間の気持ちよさが脳裏にずっと残っていて、自分が大会で勝つ事、好きなカードを活躍させる事の面白さを知った瞬間としてとても印象に残っています。」


──今でもたすくさんは『好きなカードを活躍させる』ことには強い拘りがありますよね。そんなプレイスタイルを確立する引き金となったカードだったわけですね。


■3枚目:《アクセスコード・トーカー》



──続いてのカードです。ここまでは昔のカジュアルカードという印象でしたが、《アクセスコード・トーカー》は環境一線級で活躍してきた、今でも通用するパワーカードですね。僕もよくお世話になっています。


「このカードは自分が大規模な競技大会に頻繁に出るようになったあたりで登場したカードなんですが、とにかくフィニッシャーとしての性能が高く、何度も勝利をもぎ取ってくれたカードです。」


※《アクセスコード・トーカー》…5300という遊戯王のモンスターの中でも最大級の攻撃力と、相手の場のモンスターを一掃する除去能力を持つ。不利状況からでもいきなり相手のライフポイントを0にできる強力なフィニッシャー。


「このカードは今でももちろん強いですが、当時は特に相性が良い【M∀LICE】というデッキを使っていたので、環境で一番このカードを活躍させられるデッキを握っていたので、このカードの魅力を余すところなく使い倒していました。」


──当時というと、2025年のOCG環境ですかね?


「はい、この環境で僕はYCSJという4000人規模の大会に出たんですが、公式の配信卓にも3回ほど映って、いろんな人に注目される中で試合を行ったんですが、3回とも全て《アクセスコード・トーカー》でトドメを刺して、優勝する事ができました。勝利する瞬間にいつもフィールドに残るモンスターなので、思い入れが強いです。」


■4枚目:《M∀LICE<P>White Rabbit》



──続いては【M∀LICE】のキーカード、《M∀LICE<P>White Rabbit》ですね。こちらもYCSJで活躍させていた印象があります。


「当時は本当に圧倒的なパワーだったので、使っていて信頼感が凄かったです。」


──【M∀LICE】というと他にもいくつかカードがありますが、なぜ《M∀LICE<P>White Rabbit》を選んだのでしょうか?


「【M∀LICE】というと、一番初動として強いカードは別にあって、大抵の人は《M∀LICE<P>Dormouse》を引きたいと祈って試合をすると思うんです。しかし、僕は肝心な時に引きがあまり強くなくて、《M∀LICE<P>Dormouse》ってあまり引けた記憶が無いんですよ。」


──《M∀LICE<P>White Rabbit》も強い初動ではありますが、理想展開よりは少し劣ってしまいますよね。


「はい、なので《M∀LICE<P>White Rabbit》を引いた時って、100点の手札ではない、色々なリスクがある、けど頑張ればしっかり勝ち切れる、という絶妙な状況の時が多くて、そんな中で必死に勝った記憶と結びついていて、そんな時いつも手札に来てくれていた《M∀LICE<P>White Rabbit》は【M∀LICE】カードの中でも一番思い入れが強い一枚となっています。」


■5枚目:《No-P.U.N.K.セアミン》


──最後の1枚は、《No-P.U.N.K.セアミン》ですね。このカードは、たすくさんの象徴的な1枚という印象があります。どういったところが好きで選んだ1枚なのでしょうか?


「このカードは自分の遊戯王人生を変えてくれた1枚といっても過言ではありません。自分は元々ずっと遊戯王OCGをやっていたんですが、特に配信活動などは行わずにプレイヤーとして大会に出ていました。しかし、マスターデュエルがリリースされて、オンラインで遊戯王ができるようになり、せっかくなので以前から興味のあったYouTubeでの配信活動をするようになりました。そして、いろんなデッキを使って配信をしていく中で、この《No-P.U.N.K.セアミン》を使った【P.U.N.K.】デッキの配信も何度か行っていました。」


──当時は決して【P.U.N.K.】は環境上立ち位置の良いデッキではなかったですが、たすくさんは熱心に研究していた印象があります。


「僕はこのテーマがとても好きなので、リスナーの方々とも一緒に色々考えて徐々に形にしていきました。そして、そのデッキをデュエリストカップに持ち込んだんです。」


「そのデッキは沢山練習して構築を練った甲斐もあってとても勝率が高く、そこで日本人初の世界ランキング1位を獲る事ができました。」


──今では1位常連の遊戯王星人なんて呼ばれていますが、初めての1位は《No-P.U.N.K.セアミン》と一緒に掴み取ったんですね。


余談だが、筆者もこのタイミングのデュエリストカップで【P.U.N.K.】を使って、TOP100の称号を獲得している。


環境上、向かい風な要素もとても多く、TOP100を目指す上位のポイント帯の中でも殆ど筆者とたすく氏の2人しか使い手は居ないほど、決してメジャーなデッキ選択ではなかった。


たすく氏の研究成果を信じて握りつづけ、初めてのTOP100を達成したテーマなので、筆者としても思い入れが強い一枚となっている。


「そして、その1位獲得によって世界大会出場の権利を獲得し、世界大会も【P.U.N.K.】で出場しました。自分が遊戯王で注目されるきっかけになった1枚であり、共に勝ち続けてきた相棒でもあります。」


──そんな、たすくさんが愛用する【P.U.N.K.】の魅力は何ですか?


「このデッキは自分のライフポイントをあえて削って戦う、というスタイルで、ピンチに陥ったところからの逆転が非常にアツいテーマです。今まで自分が遊戯王をやってきた中で楽しいと感じた要素が詰まっているテーマなので、とても回していて楽しいです。」

■まとめ


──こうして振り返ってみて、何か感じる事はありましたか?


「やはり何かに行き詰った時って、初心にかえる事が大事だと思うんです。ただ前に進むだけじゃなく、振り返ることも人生の中で大切だと思っています。」


ショーケースに入った1枚1枚を、共に過ごした思い出を振り返るように眺めると、その眼差しはより一層気合いの入ったものになったように感じられた。


「今まで僕が遊戯王と共に歩んできた道を振り返る事で、次の世界大会に向けて熱が入りました。」


4年連続の世界大会出場。日本中の期待を一身に背負い、今まさに調整の日々を送っているたすく氏。


今回の挑戦はどのカードを相棒に選ぶのだろうか、また新たな「思い出の1枚」が誕生するのだろうか。たすく氏の遊戯王人生は続いていく。


こうして、遊戯王を始めた最初期から話を連続して聞いてみると、たすく氏は「ピンチからの逆転」というところにとても魅力を感じているようだった。


初めて優勝を掴み取った《No.39 希望皇ホープ》での勝利体験は、意識せずともたすく氏のゲーム観に大きく影響を与えているようだ。


「三つ子の魂百まで」というが、カードゲームにおいても初めての勝利体験というのは根強く残るのかもしれない。


こういった自分のルーツを知る事で、無意識に感じていた「自分にあった戦術」というのも見えてくるのではないだろうか。


今、自分がどんなデッキを握るべきなのか迷っている人も、是非そこに目を向けてみてほしい。


大昔のカードに目を向ける事が最新の環境への向き合い方の答えになる、というのも、長くサービスが続く遊戯王の魅力の一つなのかもしれない。



インタビュアー/ライター:はみるとん



【YouTubeでインタビュー動画を公開中!】

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