2026/07/31
世界の頂点
とーしん / Shintaro Ito
ポケモンカード
Display Your Memories

カードを飾る。
そこに並ぶのは、カードだけではない。
ともに戦った記憶、仲間と過ごした時間、忘れられない勝利や悔しさ。
一枚のカードには、その人が歩んできた時間や、言葉では語り尽くせない感情が重なっている。
本企画「Display Your Memories」は、大切なカードを、その背景にある物語とともに残していく企画である。
今回は『ポケモンカード』のプレイヤー、イトウ選手にお越しいただいた。
彼のカードに込められた物語をたどっていく。
■ 自己紹介

──まずは自己紹介をお願いします。
イトウシンタロウです。TCG は『ポケモンカード』を約 15 年プレイしています。
獲得タイトルは「World Championships 2016」優勝、「World Championships 2019」準優勝です。
現在は「カードラッシュプロ」として活動しており、YouTube に動画を投稿しています。
2016 年、世界の頂点に立ったイトウシンタロウ選手。今回は、その優勝デッキを構成した 5 枚のカードを通して、世界一への道のりを振り返ってもらう。
■ 思い出のカードとの再会

実は今回、初めて PSA にカードを提出しました。これまで一度も出したことがなかったんです。
出し方が難しそうというイメージがあって、勝手にハードルを高く感じていました。でも実際に
やってみると、思っていたよりもスムーズに提出することができました。
──ではショーケースに収めてください。

...やっぱり真ん中には『メガタブンネ EX』を置きたいですね。世界大会優勝デッキの主役なので。自然とこの位置になりました。
──今改めて見て、どのような気持ちですか?

...懐かしいですね。
2016 年のカードなので、もう 10 年前のカードになります。当時は毎日このカードを触っていたのに。
カードを飾るという文化は、まだそこまで広まっていない印象があります。もちろん使ったカードを額装している人を見たことはありますが、多くのプレイヤーはファイルやストレージにしまっていることがほとんどですよね。
でも実際にこうして並べてみると、思っていた以上に見栄えがいいですし、「思い出を飾る」という楽しみ方もあるんだなと感じました。
僕は昔からファイルを作ったり、カードを整理したりするのが結構好きなんです。なので、今回作ってみて「次は 2019 年世界大会準優勝のデッキでも作ってみたいな」と思いました。
この『コバルオン』も当時使ったままのカードで....
あれ、これ当時 2016 年に使っていたやつじゃない。2017 年版になっている。当時使っていたカードを入れたつもりだったのに。

まあ間違えたのも込みで僕っぽいからいいか...。
──イトウ選手には世界大会で優勝したデッキの中から 5 枚のカードを選んでもらいました。では 1 枚ずつカードの紹介をお願いします。
■ 思い出の 1 枚目:メガタブンネ EX

今回は「World Championships 2016」で優勝した『メガタブンネ EX』デッキの中から 5 枚のカードを選びました。どのような活躍をしたかなど、少し戦術的な話も交えながら紹介していこうと思います。
『メガタブンネ EX』は、「World Championships 2016」で優勝したデッキのメインポケモンです。ワザ「マジカルシンフォニー」は、バトル場に 110 ダメージを与え、さらにこの番にサポートを使っていればベンチのポケモン 1 匹にも 50 ダメージを与えることができます。
当時は『よるのこうしん』や『オーロット BREAK』が流行しており、110 ダメージという数字が非常に有効な環境でした。そのため、『メガタブンネ EX』は環境にかなりマッチしていると判断し、このデッキを選びました。
『メガタブンネ EX』というデッキ自体は決して流行っていたポケモンではありません。世界大会でも使用率は 1%にも満たなかったと思います。むしろ初めて対戦する人の方が多かったのではないでしょうか。
だからこそ、このデッキで世界一になることができたのは、自分にとって非常に印象深い出来事でした。
ですが、僕は世界大会の初戦で敗れ、スタートダッシュを決めることができませんでした。
スコア「0-1-0」。
嫌な空気が漂う、世界大会の幕開けでした。
■ 思い出の 2 枚目:コバルオン

『コバルオン』は、このデッキを語るうえで欠かせないカードです。
少し『メガタブンネ EX』の話に戻ります。『メガタブンネ EX』はワザに必要なエネルギーが無色3 個なので、組み合わせるサブアタッカーを自由に選ぶことができます。つまり、環境に合わせて好きなタイプで構築できるデッキでした。
当時は鋼タイプ軸だけでなく、悪タイプ軸や炎タイプ軸など、さまざまな選択肢がありました。
その中で僕が選んだのが『コバルオン』を採用できる鋼タイプ軸です。結果的に、この選択が世界大会優勝へと繋がりました。
デッキの主役は『メガタブンネ EX』ですが、優勝を支えてくれたのは『コバルオン』だったと思っています。
世界大会は 1 回戦で敗れ、さらに 2 回戦も BO3 の 1 本目を落としてしまいました。あとがない、まさに絶体絶命の状況です。そんな中、『コバルオン』のワザ「ファストガード」で相手の攻撃をしのぎ、自分の場を整える時間を作ることができました。
あの 1 ターンがなければ、そのまま敗退していたかもしれません。
そこから少しずつ流れを引き戻していきました。さあ、反撃開始です。
■ 思い出の 3 枚目:アブソル

『アブソル』は、場に出すだけでダメカンを 3 個動かせる特性を持っています。この特性が当時流行していた『よるのこうしん』のメインアタッカーである『バチュル』に対して非常に有効でした。好きなタイミングでサイドを取りにいける動きができ、とても強力なカードだったと思います。
現代のカードで例えるなら、『ドラパルト ex』のワザ「ファントムダイブ」と『マシマシラ』の特性「アドレナブレイン」を組み合わせて相手をきぜつさせるような感覚に近いです。
『メガタブンネ EX』のワザ「マジカルシンフォニー」で場に残したダメカンを利用し、後続のポケモンにもアプローチできるようにしてくれたのが、この『アブソル』です。
正直、このカードがクリティカルに刺さって試合が決まったという記憶はあまりありません。ですが、この『アブソル』はたくさん使いました。大会を振り返ると、このカードがいたからこそ勝てた試合は数え切れないほどあったと思います。
『アブソル』の特性「カースドアイズ」で効率よく相手のポケモンを倒しながら勝ち進み、僕は世界大会決勝へと駒を進めました。この快進撃を陰で支えた立役者が、『アブソル』でした。
■ 思い出の 4 枚目:ダブル無色エネルギー

世界大会決勝で一番印象に残っているカードです。
決勝 1 本目。『プラターヌ博士(博士の研究)』で手札をリフレッシュし、このドローで『ダブル無色エネルギー』を引けるかどうかが勝敗を大きく左右する場面でした。
僕は山札を引き、カードをめくります。
1 枚、2 枚、3 枚。
ない!
そして、4 枚目。
『ダブル無色エネルギー』!
手札に加わった瞬間、大きな歓声が上がりました。対戦中はヘッドフォンを着用しているため、基本的には外の音は聞こえません。それでも、『ダブル無色エネルギー』を引いた瞬間の歓声だけ
はヘッドフォンを貫通して伝わってきました。
まるで地響きのようでした。その瞬間、「みんなが応援してくれているんだ」と強く感じたのを、
今でも覚えています。
『ダブル無色エネルギー』は当時、多くのデッキで使われていた馴染み深いカードです。でも僕にとっては、みんなの応援と一緒に引き寄せた特別な 1 枚です。
『ダブル無色エネルギー』を『メガタブンネ EX』につけ、ワザ「マジカルシンフォニー」を宣言しました。これで決勝戦 BO3 の 1 本目を先取します。
優勝まで、あと 1 本
■ 思い出の5枚目:フラダリ

そして迎えた決勝戦も、いよいよ大詰めです。
僕は BO3 の 1 本目を取り、この対戦に勝つことができれば世界一です。
最後は、手札に『フラダリ』さえあれば優勝を決められるターン。
僕は『バトルサーチャー』を使い、トラッシュにある『フラダリ』を手札に加えます。
そのまま『フラダリ』を使い、相手のポケモンを 2 体同時に倒し、2 ゲーム連取で対戦に勝利し
ました。
世界大会で優勝を決めてくれた最後のカードは、この『フラダリ』です。
こうして僕は、『メガタブンネ EX』デッキで「World Championships 2016」優勝を果たすことが
できました。
■思い出を飾る

──今回の企画で、新しく感じたことや発見はありましたか?
今回の企画で感じたのは、「思い出を形として残す」という楽しさです。
ケースに収めて飾ることで、カードが単なる対戦するアイテムではなく、当時の思い出を形として残せる存在になりました。
今回は 1 つのデッキの中から、特に印象に残っている 5 枚を選びました。
メインポケモンの『メガタブンネ EX』は、誰が見ても象徴的なカードだと思います。
一方で、『ダブル無色エネルギー』や『フラダリ』は、当時ほとんどのデッキに採用されていた汎用カードです。普通なら、わざわざ飾る対象にはならないかもしれません。
でも僕にとっては、それぞれに忘れられない思い出があります。
『コバルオン』が突破口を開き、『アブソル』がサイドを連取、『ダブル無色エネルギー』が勝利を引き寄せ、最後は『フラダリ』で優勝を決めてくれました。
こうして並べてみると、それぞれのカードが違う役割を担いながら、優勝という結果につながっていたことを改めて実感します。
──次にショーケースに収めるなら、どんなテーマで選びますか?
次は 2019 年の世界大会で準優勝になったときに使用した『ズガドーン GX』と『アーゴヨン』のデッキで作ってみようと思います。なので、今回と同様、「ひとつのデッキから 5 枚」を選びたいです。
シマダ選手やヤマグチ選手の作品を見て感じたのですが、シマダ選手、ヤマグチ選手、イトウの3 人はそれぞれ全く違うテーマでカードを選んでいると思いました。
シマダ選手は人生そのものを振り返るような 5 枚を。
ヤマグチ選手はプレイヤーとしての勝利を象徴する 5 枚を。
そして僕は、ひとつのデッキから 5 枚を選びました。
同じ 5 枚でも、人によってストーリーがまったく違うところが今回の企画の面白さだと思います。
シマダ選手もヤマグチ選手も、長い競技人生の中から 5 枚を選んでいました。
一方で僕は、『World Championships 2016 優勝』という 1 つの出来事を切り取って、そのデッキを象徴する 5 枚を選びました。
こういう飾り方は、多くのプレイヤーにもできると思います。
ジムバトルで初めて優勝したデッキ。初めて大会で勝ち越したデッキ。皆さんにも、きっと忘れられないデッキがあるはずです。ぜひその中から、自分だけの 5 枚を選んで飾ってみてください。
きっと、世界に一つだけの作品になると思います。
今回の企画を通して、カードは遊ぶだけでなく、思い出を形として残せるものでもあると改めて感じました。素敵な企画をありがとうございました。
インタビュアー/ライター:ポケカブック




