2026/07/31
歴代の相棒と共に
凱 / Yoshiyuki Yamaguchi
ポケモンカード
Display Your Memories

カードを飾る。
そこに並ぶのは、カードだけではない。
ともに戦った記憶、仲間と過ごした時間、忘れられない勝利や悔しさ。
一枚のカードには、その人が歩んできた時間や、言葉では語り尽くせない感情が重なっている。
本企画「Display Your Memories」は、大切なカードを、その背景にある物語とともに残していく企画である。
今回は『ポケモンカード』のプレイヤー、ヤマグチ選手にお越しいただいた。
彼のカードに込められた物語をたどっていく。
■ 自己紹介

──まずは自己紹介をお願いします。
アローラ!ヤマグチヨシユキです。TCG は『ポケモンカード』をプレイしています。
これまでに国内大会、海外大会で優勝したことがあります。現在は『EMBERZ』として活動しており、海外大会に積極的に参加するスタイルで競技を続けています。
ポケモンカードは 5 歳の頃に始めました。一度離れていた時期もありますが、プレイ歴は 2026年で 18 年目になります。
国内外の大会で数々の実績を残してきたヤマグチヨシユキ選手。所属する「EMBERZ」の名にふさわしく、競技シーンを熱く駆け抜けるプレイヤーだ。今回は、そんな彼の競技人生を彩ってきた 5 枚のカードを紹介してもらった。
■ 思い出のカードとの再会
さあさあさあ、どうなっていますか~?
早く見せてください!

おおお、意外と点数高い。まあ...こんなもんか。すごい。
どれも実際の大会で使っていたカードです。それはもうバチバチに使い込んでいます。
──ではショーケースに収めてください。


かっこいい。圧ッ巻!です。
今まで一緒に戦ってきたカードたちを並べると感慨深い。歴代の相棒なので。これ飾るのかなりいいなって思います。
──今回は、ヤマグチ選手の推しポケモンのカード 1 枚と、競技人生の節目となった 4 枚のカードを選んでいただきました。それでは、1 枚ずつお話を伺えたらと思います。
■ 思い出の 1 枚目:ソーナンス V

──まずは、こちらの『ソーナンス V』からお聞かせください。
『ソーナンス』は、ぼくの推しポケモンです。
ポケモンカードは 5 歳の頃から遊んでいましたが、中学・高校では一度離れ、大学生のときに復帰しました。その復帰した大会でもらったのが、『ソーナンス』のぬいぐるみです。それ以来、ずっと『ソーナンス』が好きです。
この復帰した大会は、ぼくにとって特別な大会です。
地元の愛知県で長年にわたって定期開催されていた大会で、小学生の頃は毎回のように参加していました。高校生や大学生のお兄さんたちにたくさん遊んでもらったことを、今でもよく覚えています。
ありがたいことに、現在ぼくは SNS 上で「ONC(おにいちゃん)」という愛称で呼んでもらっています。
ですが、当時小学生だったぼくにとっての「ONC(おにいちゃん)」は、この大会で出会った方々でした。まさに、ぼくのオリジンが眠る大会です。
数ある『ソーナンス』の中で『ソーナンス V』を選んだ理由は、『ソーナンス』で初めて「ルールを持つポケモン」になったカードだからです。ぼくは「ルールを持つポケモン」が好きです。
ポケモンカードには「ex」や「V」といった区分があり、これらを「ルールを持つポケモン」と呼びます。「ルールを持つポケモン」は強力な反面、倒されると多くポイントを取られてしまうリスクがあります。でも、そのリスクがあるからこそ、バトルにはスピードや爽快感が生まれると思っています。
『ソーナンス』への愛着と、「ルールを持つポケモン」へのこだわり。その両方が詰まった『ソーナンス V』はヤマグチ選手にとって、まさに「推し」の 1 枚だ。
(※)英語版なのは海外大会で現地の ONC からもらった。
■ 思い出の 2 枚目:ウルトラネクロズマ GX

──続いて、『ウルトラネクロズマ GX』を選んだ理由を教えてください。
ポケモンカードでは、「チャンピオンズリーグ(CL)」という公式大会でベスト 4 に入賞すると記念の盾をもらえます。
ぼくは『ウルトラネクロズマ GX』で「チャンピオンズリーグ 2019 新潟」で準優勝し、初めてその記念の盾を獲得しました。この記念の盾は多くのポケカプレイヤーにとって一つの指標であり、持っているかどうかで周囲からの見られ方が大きく変わる、大変重みのあるものです。
この大会の決勝戦の相手は、サーニーゴ(シマダダイチ)選手でした。
当時はまだ顔見知り程度の仲でしたが、この決勝戦をきっかけに連絡を取り合うようになり、対戦や情報交換をする仲になりました。彼との出会いがぼくのポケモンカードへの熱をさらに加速させ、その積み重ねが今のポケモンカードプロという立場につながっています。
初めて記念の盾を獲得させてくれたこと。そして、おそらく生涯のライバルになるであろうサーニーゴ選手との出会いをくれたこと。この二つの思い出が詰まった『ウルトラネクロズマ GX』を選びました。
初めて手にした記念の盾、そして生涯のライバルとの出会い。『ウルトラネクロズマ GX』は、ヤマグチ選手の競技人生が大きく動き始めた転機の 1 枚だった。
■ 思い出の 3 枚目:ミュウツー&ミュウ GX

──続いて、『ミュウツー&ミュウ GX』を選んだ理由を教えてください。
『ミュウツー&ミュウ GX』は 2019 年の全国大会で 3 位になったときに使用していたカードです。
発売当初から、そのテキストに強く惹かれていました。簡単に言えば、条件付きではありますが、自分のポケモンのワザをすべて使える能力を持っています。そのため、リリースされているほぼすべてのポケモンが組み合わせの候補となり、ものすごく時間をかけて考察しました。
全国大会の直前には、10 人ほどで部屋を借り、すし詰め状態になりながら「あーでもない、こーでもない。」と議論を重ねました。
このデッキには苦手なデッキが 1 つありました。
それは、『ミュウツー&ミュウ GX』の「自分のポケモンのワザを使える」という能力を封じてくるデッキです。
その対策が最大の課題だったのですが、そのデッキに勝つためだけに特定のカードを 3 枚も採用しました。
ポケモンカードのデッキで、特定のデッキだけを意識したカードを 3 枚も採用するのは、かなり思い切った判断です。それでもその決断ができたのは、合宿で仲間たちと四六時中このデッキについて考え続けたからこそだったと思います。
その結果、2019 シーズンはポイントランキング 1 位で終えることができました。
このデッキは炎エネルギーを軸に戦い、『ミュウツー&ミュウ GX』の特性「パーフェクション」を最大限に生かす構築だったことから、「レッドパーフェクション」と名付けられた。
その名は、多くのプレイヤーの記憶に残るデッキネームとなった。
■ 思い出の 4 枚目:サーナイト ex

──続いて、『サーナイト ex』を選んだ理由を教えてください。
『サーナイト ex』は「チャンピオンズリーグ 2023 新潟」で優勝したときに使用したカードです。
世界大会の出場権利を得るには、この大会か、次の全国大会で勝つしかないという状況で、ぼくを優勝まで導いてくれました。
当時は公式に「ポケカ四天王」という制度がありました。これは、公式から認められたポケモンカードプレイヤーが 4 人だけ選ばれる制度です。ぼくもその一人だったのですが、その中で自分だけが世界大会への出場権利を獲得できていない状況でした。
いまだから言えますが、正直かなりのプレッシャーに追い込まれた中での勝利でした。そのため、優勝した瞬間の嬉しさはひときわ大きかったことを覚えています。
『サーナイト ex』を見ると、「プレッシャー」というものと真剣に向き合った日々を思い出します。プレッシャーには、良い面と悪い面の二面性があるというのが、『サーナイト ex』で得た教訓です。
良いプレッシャーは冷たく、張り詰めた緊張感さえ心地よく感じます。
しかし、悪いプレッシャーは精神がとことん削られていきます。
当時のぼくが悪い状態から抜け出すには、膨大な練習量を積み重ね、精神が挫けないように支え続けるしかありませんでした。悪いプレッシャーを良いプレッシャーへと変えられるよう、ひたすら向き合い続けた日々を思い出します。
そんなギリギリの逆境の中で『サーナイト ex』は優勝まで導いてくれました。本当にありがとう。
『サーナイト ex』は「チャンピオンズリーグ 2023 新潟」の優勝だけでなく、続く全国大会でもベスト 8 入りに貢献。『公式大会 29 連勝』という無双の記録をともに築き上げた。
■ 思い出の5枚目:メガアブソル ex

──最後に、『メガアブソル ex』を選んだ理由を教えてください。
2025 年 9 月から 2026 年 6 月にかけて行われた 2026 年シーズンでは、多くの海外大会に出場しました。『メガアブソル ex』は、「LAIC(南アメリカチャンピオンシップス)」でベスト 4、「ヒューストンリージョナル」で優勝へと導いてくれたカードです。
『メガアブソル ex』は、2026 年シーズン開幕から 1〜2 か月ほどで彗星のごとく現れたデッキです。このデッキと出会って以降、半年近く『メガアブソル ex』を使い続けました。
『メガアブソル ex』を使い続けて得た知見は、2 つあります。
1 つ目は、同じデッキを使い続けることの大切さです。
1 つのデッキを使い続けることで、多くの場面で最適解を反射的に導けるようになります。しかし、その最適解はあくまで一般論です。そこで、その最適解へ自らの五感にインプットされた経験則を乗せ、もう一度シミュレートします。そうすると見えてくるんですよ。どんな逆境からでも、細い勝ち筋が。その勝ち筋を追い、通す!この瞬間!本当にたまりません。
2 つ目は、結果もついてくるということです。
結果として『メガアブソル ex』は勝利をもたらしてくれました。しかし、シーズンを通して一度もその強さを疑わなかったかと言われれば、決してそんなことはありません。デッキとしての弱点も理解していました。それでも、その弱点を受け入れたうえでテクニックを磨き続けました。
1 つのデッキを信じて使い続ける。そうすれば、結果はあとからついてくる。『メガアブソル ex』
はこの 2 つを教えてくれました。
日本在住のプレイヤーが海外大会で世界大会の権利を獲得するのは、とても難しいことです。それを成し遂げさせてくれたこのカードを、ぼくは相棒だと思っています。
勝利だけでなく、積み重ねることの価値も教えてくれた『メガアブソル ex』。その 1 枚は、ヤマグチ選手の 2026 年シーズンそのものを映し出している。
■思い出を飾る

──完成したショーケースをご覧になって、どんなことを感じましたか?
自分のレガシーといいますか。これまでの競技人生を、このショーケースに込めてみました。
この中で一番古いのは『ウルトラネクロズマ GX』です。
『ウルトラネクロズマ GX』なんて、つい最近のことのように感じるのですが、『ミュウツー&ミュウ GX』や『サーナイト ex』、『メガアブソル ex』......。ほかにも数え切れないほどのカードが頭に浮かびます。こうして並べてみると、本当に長い道のりを歩んできたんだなと実感します。
カードを 1 枚ずつ単体で見れば、「ああ、あの時のカードね。」で終わってしまいます。
でも、こうして 1 つのショーケースに並べることで、自分が歩んできた長い時間や積み重ねを改めて感じることができました。このショーケース、本当に気に入っています。
まだまだポケモンカードの競技人生は続くと思っているので、これから優勝した大会で使ったカードを、ひとつずつショーケースに残していきたいです。これは、その 1 つ目ですね。
このショーケースは YouTube 配信に映る場所へ飾る予定です。ぜひ配信でも見てください。
このショーケースを何個も作って、いつか視聴者さんから「後ろに飾ってあるカードは何ですか?」と聞かれたら、こう答えるんです。
「ぜんぶ、公式大会で優勝したときに使ったカードたちです。」
インタビュアー/ライター:ポケカブック




